倉敷市は今年度の新規事業として、教師の授業力を高めるための取り組み「授業力アップ支援事業」を実施しています。一体、どんな取り組みなのでしょうか?ある小学校の取材を通して、教師の授業に寄せる思い入れや工夫がみえてきました。小松原記者の報告です。
倉敷市立下津井東小学校です。6月9日の6年生の算数の授業はいつもと少し違う雰囲気で行われていました。こちらの女性。授業力アップ支援員の田代恒子さんです。去年、水島小学校の校長を定年退職した大ベテランです。
現役教師に授業のアドバイスをするためやってきました。他の学年の教師たちも何かヒントを見つけようと授業を真剣に見学しました。授業をしたのは合田行宏教諭。キャリアは16年。若い教師が多いこちらの小学校では中堅の教師です。この日は、「平均を求める」6年生の算数の授業が行われました。教科書には同じ種類のコップに均等に飲み物を分ける方法が書かれています。しかし、合田先生が用意したのはこちら。種類の違うコップでした。
授業のあとの反省会で合田先生は次のように理由を説明しました。
「同じコップの場合、高さを揃えれば均等になるが、それだと合わせて割るという必然がない」。合田先生は「ならす」・「合わせて割る」という平均の概念を子どもたちに教えることを授業の軸に置いたのです。授業では実際に子どもたちが班ごとにジュースをメスシリンダーで計り均等に分ける方法を考えました。「具体物を使うこと」や「子どもたちに体験させること」もこの授業の大きなポイントです。他の若手の先生たちには大きな刺激になったようです。
そもそも授業力アップとは一体どういうものなのでしょうか?倉敷市教育委員会の横溝さんは授業力アップの背景に、教師が多忙で、先輩と若手が授業について自然に意見交換をしたり、一緒に教材研究をしたりする時間が少なくなったことも影響していると指摘します。こういったことから、倉敷市内の小学校では、教師同士の話し合いの場を設け積極的に授業についての意見交換をしています。キャリアの短い若手教師にとって、先輩教師の考えを聞く大切な場です。
合田教諭の授業は力が入りすぎて、予定時間を15分もオーバーしてしまいました。その中で支援員の田代さんが注目したのはこの一言。専門用語で主要発問」といいます。この授業の中で何が一番大切なのかを子どもたちに尋ねる場面です。教師はこの主要発問を投げかけるタイミングを常に図っているのです。クラス全員が主要発問に反応したとき、子どもたちの学ぶ喜びが表情に浮かんだときこそが教師の最大の喜びなのです。平成23年度には小学校の学習指導要領の改訂が行われ、時代と共に授業のスタイルも変わります。しかし、授業の質を向上させようとする教師の情熱は決して色あせてはいけないものです。授業力アップ支援事業の真の狙いが見えた取材でした。




