続いては、特集です。8日から10日までの三連休中に、倉敷市の阿智神社境内にある古民家を舞台に若手アート作家たちによる一風変わった展示会が開かれました。単なる作品の展示会というだけではなく、アートのジャンルを超えて、和の空間で作家同士の交信の場と鑑賞者を巻き込んだコミュニティーの場をつくり出そうという試みでした。
会場は、倉敷市本町の鶴形山の中腹にある阿智神社の斎館です。畳敷きの日本家屋、それも古民家である斎館を現代アートの若い担い手たちは展示会場に選びました。庭に入ると木につられたデニムのスカートが出迎えてくれます。倉敷市に住む「どりー」さんの作品です。衣服には、その日その日の彼女の記憶が加えられていきます。縁側は「abenaa」さんのカラフルな手工芸品でにぎやかです。2年間アフリカで暮らした歌手でもある彼女のリズムが聞こえてくるかのようです。畳敷きの居間に上がると、中央にコタツか囲炉裏を思わせるようにテレビモニターが置かれています。彫刻家である片山康之さんが、立体作品から離れ、映像に表現の世界を広げようとの試みです。
丸窓に障子というと、日本の住まいの落ち着きを感じさせますが、岡山市に住む画家、佐藤亮太さんは障子に代えていくつもの線と色彩による絵を貼り付けました。丸いキャンパスから和の風情が漂ってきます。床の間には掛け軸ならぬ3点の油絵が飾られていました。2年前にI氏賞奨励賞を受賞した気鋭の画家上西竜二さんの作品です。着物姿の女性と、自然の山野を徹底した写実で描いています。床の間という空間で鑑賞者にも「見る」とは何か、を問いかけるような力が伝わってきます。
温かい日差しを受け鈴や真鍮で出来たスプーンやアクセサリーが柔らかく輝きます。小田聖子さんは、伝統と現在がほっこりと並存する手工芸をつくり続けます。奥の間では、何やら得体の知れぬものが、待ち構えています。
「もしかして座敷童子」と思った人も多かったようです。岡山県立大学を卒業後、ドイツの大学で学んでいる藤原啓史さんの遠くを見るような少年像です。作家たちは、畳の上で車座になって語り合いました。日ごろは一人、アトリエにこもって自分と向き合うことが多いだけに、さまざまなインスピレーションが、飛び交っていたようでした。和の空間でのイベントを「ラウンジ」と名づけた若手アート作家たちの次へのステップが楽しみです。




