KCTコミちゃん（倉敷ケーブルテレビ）

昔な、あるところに若いもんがおってな。一人のきれいな娘に惚れて、そうして、その娘のところにたびたび、手紙を出したんじゃ。ところが、一行に返事がない。また手紙を出したところが、返事がきたんじゃな。「いや、返事がきた」と思うて、開けてみたら、中が赤く塗られたお酒を飲むチョコ、赤いチョコが贈られてきたんじゃ。「ありゃあ、こりゃあ、赤いチョコを贈ってきたぞ。どういう意味じゃろうかな。うん、赤いチョコじゃから、『あかいうちからちょこちょこおいで』夜這いじゃのうて、まだあかいうちからやって来い意味じゃ」思うて、男は、喜んで、まだ日が暮れんうちから、娘のところを訪ねて行ったんじゃ。そうしたら、怒られて追い返された。しょげた若いもんは、困ってしもうて、年寄りに相談したんだ。「うん、これか、こりゃあ、怒られるはずじゃ、こりゃあ、あかいうちからちょこちょこおいでじゃのうて、赤いチョコじゃから、「アカチョコベー」なんじゃ、じゃから、あんたとは、つきあわんいうことなんじゃ」言うたら、その若いもんは、もう涙を流して泣いたんじゃな。じゃけど、ほかのものは、教えてくれた。「昔から、イモリの黒焼きは、惚れ薬じゃ、あんた、イモリの黒焼きを作ってその娘にかけてやれ、そうしたら、あんたに惚れてくれる」言われたもんじゃから、また、立ち直って、冷たい池の中からイモリをとって、黒焼きにして、粉にして、袋につめて、娘の家の前で待っとったんじゃな。ちょうど、娘が出てきたもんじゃから、イモリの黒焼きの粉をパッとかけた。運が悪りーことに、そこにサッと風が吹いてきて、黒焼きの粉が娘にかからずに、そばにあった米俵にザッとかかった。そうしたら、横に積んであった米俵が、ムクムクムクッと起きたかと思ったら、コッテンコー、コッテンコー、コッテンコと若いものを追いかけてきた。若いもんは、びっくりしてから、トントントントン、逃げる。コッテンコーコッテンコーコッテンコ追いかける、若いものは、逃げる。ゴッテンコーゴッテンコー逃げる逃げる。コッテンコー、コッテンコー。ま、逃げて逃げたんじゃど、弱ってしもうたんじゃ。それでな、昔から、あんまり、食う米に、追いかけるようじゃ。しんどいんじゃって、そういうことわざが生まれたんじゃって、昔こっぷり。